剣道日本の剣日調査リポートに岐阜県神武舘が取り上げられました

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剣日調査リポート

スキージャーナル社・剣道日本 2013年2月号

剣道日本 2013年2月号 剣日調査局リポート にて
当社で剣道場の床を施工させていただいた神武舘・神山道場が取り上げられました。
剣道場床の秘密がたくさん語られています。

「理想の床板に張り替えて」

平成24年11月11日、全日本女子学生優勝大会で朝日大学が創部以来初の3位入賞を果たした時、神山勝郎監督(教士七段・73歳)の自宅にある神武舘道場は、床の張替え工事の最中だった。

神山さんは岐阜大学を卒業後、市立岐阜商業高校の教員として長く指導し、全日本選手権優勝者の近本巧選手らを育てた。そのかたわら小学校の体育館を借りて少年指導を始めたが、子どもが大勢いた時代で効率が上がらないため、また周囲からの勧めもあって、昭和52年、自宅敷地に神武舘道場を建てた。退職後、朝日大学が運動部を強化するにあたり招聘されて、平成14年から監督に就任、岐阜市内ながら岐阜駅から10km余り離れた農村地帯にある神武舘道場だが、週3回の稽古に、朝日大学の学生や大人の剣士たちも大勢訪れている。

道場は建ててから35年が経過し多少傷んではいたが使える状態ではあったし、塗料は塗ってあったが悪い床というわけではなかった。神山さんは市立岐阜商業時代と、朝日大学に入ったときに新しい道場を建てた経験があり、監督として要望を伝えたりはしたが、もちろん自分で費用を出したわけではなく、構造や床の材質についてとくに詳しいというわけでもなかった。

床を張り替えようと思ったのは、大学の合宿がきっかけだった。毎年、石川県小松市の桜木体育館という施設で夏合宿を行っていたが、その道場で1週間稽古をすると調子が良くなってくる。

「最初はなぜか分からなかったのですが、何年目かに床のせいだと気づいたんです。合板ではありますが無塗装で、少し滑るような感じはありますがとても感触がいい。1週間やっていると、自分はこんなに上手だったかなと思うほどですし(笑)、学生はすごい勢いで出てくるようになる。私は堅い床で稽古するとアキレス腱が痛くなることもあり、こういう床でやりたいなとおもっていました」

ある年、涼しくて宿泊費が安いというので別な場所で合宿をしてみたことがあるが、借りた小学校の体育館の床が堅くて、神山さんだけでなく普段から足を痛めやすい学生は痛くなってしまった。それで1年限りになった。

こんなこともあった。数年前、神山さんが教育実習の関係で福岡県の筑紫台高校を訪れたとき、グラウンドで工事をしていた。何の工事かと尋ねると人工芝の張り替えだという。

「筑紫台はラグビーも強いのですが、土の上では思い切ってできないことが芝の上ならできると言うんです。朝日大学のグランドも人工芝なので関係者に聞いてみると同じことを言う。剣道も同じだな、いいところでやらなあかん、と思いました」

「この床でやれば剣道が変わる」

そんなときに出会ったのが本誌平成24年2月号の記事「いい床でやろう!」だった。紹介されていた栃木県の福心舘にも電話をかけて話を聞き、無垢材(一本の原木から直接必要な寸法に切り出した板)を使った無塗装の床の素晴らしさを知る。そしてその床板を手がけた(株)五感の前田英樹さんに連絡をとった。五感は東京・新木場にあり、剣道場や住宅のフローリング用の無垢材を取り扱っている。すぐに前田さんが道場を訪ねてきてくれたので、道場を見てもらって見積もりをとった。予算のこともありしばらく迷っていたが、夏になって合宿で桜木体育館で稽古をした後、やっぱり思い切って張り替えようと決心したのである。

11月5日に着工し約3週間で完成。工事は床を張り替えるのではなく、これまでの床の上に新しい板を張るというものだった。天井が充分に高かったためそのような工法がとれた。古い板を撤去するとその処理費用でかなり割高になるという。

11月半ば、工事中の神武舘道場を訪ねた。半分ほど床板が張られ、半分はその下の木枠が見えている状態。床板は無垢の杉である。作業をしているのは専属の大工さんで、この工事は最初から最後まで一人で行うのだという。

「半分はAさんに、半分はBさんにまかせるということになると床としての品質がバラバラになってしまうんです」と前田さん。

「前田さんの仕事は気持ちよくやらせてもらっています。何よりもいい材料を使っていますので」と言うこの大工さんは泊まり込みで作業をした。誰にでも任せられるという仕事ではないらしい。敷地が広く農村地帯であるためか、近所の苦情も無く毎日夜8時頃まで作業ができたので3週間で終わったが、通常は1ヶ月程度かかる。

12月、完成して2週間ほどが過ぎた神武舘道場を再び訪ねた。

「やりやすいです。足で間を詰めていくのがとてもスムーズで抵抗がないので、パッといいところに入れます。感触が柔らかいですし、木の温かみがあります。寒くても前の床のような冷たさがない。若い大学生は前屈みになると滑りますが、銃身の位置が収まっている者はほとんど滑りません。2年か3年この床でやれば剣道が変わってくると思いますよ」(神山さん)

道場全体に。思い切り稽古ができる喜びが満ちているようだった。前田さんは工事が始まる前から何度も足を運んだが、この日は防具を持参し、神山さんや道場の剣士たちと竹刀を交えた。

神武舘道場の剣士たちに聞く

◆剣道が上手になったような気がします。足幅の広い人は滑ると言いますが、しっかり形がとれている人は滑らないです。子どもたちとやるときは全然抵抗もないし、工事の間借りていた施設(ダンスフロアのような多目的施設)に比べると全然違います。子どもたちも手打ちがなくなるというか、しっかりしてきました。

(神武舘道場指導者・河村龍朗さん・教士七段)

◆新しくなってうれしいです。すごくきれいになったし、柔らかくてやりやすくなりました。(他の道場へ行って)床が冷たく感じることがありますが、ここはあったかいです。

(神武舘道場・大谷朱音さん・中学2年生)

◆自分の剣道人生で一番いい床です。人それぞれだと思いますが、僕は少し滑る方がやりやすいので。適度に滑るいい床でも、足の裏が熱くなったり足の裏の皮が剥けたりするんですが、ここはそれがまったくありません。

(朝日大学2年生・丸山裕也さん)

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